ヤドカリ


設計
某氏の推薦で買ってしまったユーロなユニット(HT080G0)が有ります。
フランスのオーダックスというメーカーの8cmユニットで、約5,000円でした。
国産のユニットに比べると、若干高価なのは、輸入の手間を考えると仕方の無い所でしょう。
薄い目の鉄プレスフレームに、プラスティックカバーが付いていて、見かけは国産のユニットと違います。
マグネットは直径56mmの厚さ12mmと強力で、全体の重さは340g。
コーンは深い目のペーパーに塗装した物で、触るとべたつきそうな印象が有りますが、そんな事は有りません。
エッジはゴム製で、幅が広く、ストロークがとれそうで、ウーファーの様な印象を受けました。
実際、このユニットはウーファーなのですが、注文したときはフルレンジとばかり思っていました。(メーカーのウェッブサイトを見て気が付いた。)
スペックを調べてみると、f0は80Hz、Q0は0.53、メーカー推薦容量は1.9リットルと成っています。
テスト用の大きい目の箱(20リットル)に入れたり、裸で鳴らしたりした印象では、音調はソフトではなくニュートラルな感じ、低音はシッカリ出ますが、高音は寂しいといった所です。
耐入力も大きく、結構大きな音も出せるので、ダクトの共振周波数を下げたバスレフかダブルバスレフ、あるいは共鳴管方式でも、低音がかなり稼げそうな気がします。
落書き帳に、いろいろと設計して見ましたが、どの方式を使用した場合でもツィーターは必須の様に思います。
設計したスピーカーを、何処に設置し、どのような用途で使用するかを考えているうちに使いどころが無い感が強まってきました。
「はてさて、ワタシは今、どんなスピーカーが有れば便利なのだろう、、、。」と思案に暮れていました。
落書き帳の段階では、うつ伏せに寝転んで設計していますが、その時、エージングとインスピレーションを得る為に、使用するユニットを裸で鳴らして聞いています。
その音が結構良いのに感心している間に、「これで行こう」と思いつきました。
作成するスピーカーは、「枕もとで聴くミニスピーカー」です。
低音を伸ばさなければ、高音もツィーター無しで行けそうです。

今、このユニットと私の顔までの距離は約30cm、これ以上の距離を開けると低音不足が気になります。
逆にいえば、この距離以下で聴く限り、キャビネットが無くても、それなりの低音は感じられます。
そこで、日曜大工の店で200x100x60mm、重さ3Kgのレンガを購入し、それにユニットを接着して使用する事にしました。
設計と同時に完成した様なモンですが、それではあんまりなので、ちょっとしたオプションを作成することにします。
それは、「外付けボックス」です。
このボックスにユニットが接着されたレンガを組み込む事によって、密閉型スピーカーに早変わりすると言うアイディアです。
設計で難しいのは、箱の大きさはレンガが収まる大きさにして、レンガを設置&固定できるような構造にする事です。
板取りの関係から容量は約4リットルになりましたが、ユニットのQ0からして、2リットル以上であれば低音は大丈夫(出過ぎる事は無い)だと思います。
背板を取り外して、後ろからレンガ部分を入れ、背板で押し付ける構造になっています。
背板とレンガには5mmの隙間が出来ますので、フェルトかゴム等を挟みます。
背板は2種類あり、一種類はケーブルを通すだけの板で、ほぼ密閉型になり、もう一種類は直径12mm、長さ30mmのポートが4つ空いたバスレフ型になります。(息抜き程度か?)
計算上の共振周波数は96Hzに成りますが、気流抵抗を考えると、もっと低くなる筈です

図面を見る

組み立て
レンガ部は簡単、箱に合うようにレンガの下から170mmの部分にユニットを接着するだけです。
接着はエポキシ接着剤、急ぐ必要は無いので90分硬化の物を使用しました。
箱の方は、カットさえしていない段階です。
枕もとで現在運用中で、箱は不要だと感じていますが、一応、箱も作成予定です。

さて、箱を組み立ててみました。
最近、組み立てたAVスピーカーとは異なり、かなり凝った構造になっていますし、精度も欲しいので、釘とボンド(白)を使用しての組み立てです。
仮組み立てをして見ると、背面からレンガ部を入れるのが、かなり厳しい事が分かりました。
結局、天板を2枚重ねにする6番の板は使わないことになりました。(つけると、レンガ部が入れられない。)
一応、多少の余裕は計算してあったのですが、あくまで「一応計算した。」と言うレベルで予定変更です。

予定変更は、まだまだ有ります。
設計図では、背面の板は9個のボルトで取り付ける予定でしたが、考えてみると設計図の位置に穴を空けると、4と5の板にぶつかる事になります。
第一、開け閉めするのに9個所もボルトを捩じるのも面倒なので、写真の様に4個所にしました。

バッフルの補強材の取り付けも、縦を横に取り付けました。
仮組みで分かったのですが、設計のままだと、補強材がボックスの上部と下部を分割してしまう感が有ったのです。
この様に、設計だけでは、困った事が起る事が良くあるので、仮組みは重要です。(って、私の設計だからか!?)

釘を使えば、組み立ては簡単、4と5の補強兼スピーカー部ガイドレールが、箱全体の直角を出すのに貢献して居る事もあり、まぁまぁの精度で組み上がりました。
この段階で、ちょっとレンガ部を入れて鳴らしてみましたが、箱の効果は絶大で(良くも悪くも)、完成と測定が楽しみです。
なお、スピーカー部にターミナル?を取り付けました。
本当のターミナルを取り付けるスペースは無いし、ワニ口クリップでケーブルを噛ませるのが妥当な方法だと思います。

組み立ての最後は、レンガ部の固定部分です。
箱の後ろから入れ、フロントバッフルに押し付ける構造なので、隙間をどうするかですが、最初の予定通りウレタンゴムを使用します。
10cm四方で厚さ5mmのウレタンゴム(40円)を2枚購入し、直径70mmの丸を切り出します。
その正方形を、フロントバッフルに木工ボンドで貼り付け、余った丸を2分割して、背板(密閉用とバスレフ用)に、貼り付けます。

塗装
さて、一番大変な工程とも言える、塗装に入ります。
このスピーカーは、目の前(50cm以下)で使用する可能性が高いので、あまり刺激的な色は避けたい所です。
しかし、目の前で聴く時は、スピーカー部だけでの使用に成るでしょうから、いっそ派手な色にしようと思いました。
そこで日曜大工の店で、カゴに適当な色のスプレーを数本入れ、目をつぶって「エイ!」と取り出したスプレーが、この色です。(笑)
スプレーで仕上げる場合、所謂「塗り」の時間は短縮できます(乾燥時間が早い)が、その分下処理は、丁寧に行う必要が有ります。
エポキシ系のウッドパテで、大きな凹みを埋めた後、120番のペーパーをあてておきます。
その時に、ついでに箱のカドを軽く落としておいて、ラウンドボックス風にしました。 この作業は、電動のサンダーが有れば、手間らしい手間では有りません。
その後との粉を塗り込み、乾いた後、布でゴシゴシ拭いて、下処理は完了です。
スプレー式の欠点は、費用がかかる事で、このサイズの箱でも198円のスプレーを4本も使用する事になりました。
スプレーは3回吹き付けましたが、2回目が乾いたとき、400番のペーパーで表面の微妙なムラを削ります。
これは、スプレーから出る霧の粒で、巨大な物が、デコボコを作るからです。
最後に、背板の取り外しか簡単に出来るように、取っ手をつけました。(白いセラミック製で一個、110円)
コレを取り付けると、背板の叩いた時の音が、ダンプされるのが分かりますが、音に対してどれほど好結果が有るかは微妙です。(一度、コレを2、30個付けたバッフル板を作って、試してみるかな。)

視聴
先ずは基本形の裸での状態での視聴結果から。
距離をとると、低音がスカスカで、話に成らないのですが、30cm以下で鳴らす限り、実用になるバランスになります。
低音から高音までの音の統一性と、バランスはナカナカで、愛用のヘッドホンを彷彿とさせる良さが有ります。
耳当りの良い中高音で、聴き疲れが少なく、枕もとで聴くには充分です。
ユニットの裏にも盛大に中高音が撒き散らされている筈ですが、あまり気になりません。

さて、箱に入れての視聴ですが、バリエーションとしては、背板をつけない後方開放型、密閉型、バスレフ型が実験できます。
先ずは後方開放型での視聴ですが、これはオーディオ的には厳しいものが有ります。
音圧は、グッとアップし、大きな音が出ますが、「カーン」と言う響きが耳にうるさく、何を聴いても、その音が気になります。
さっさと次に行きたくなる感じです。

次に密閉型を聴いて見ました。
これは、非常に良い感じです。
低音もシッカリ出ていますし、中高音の響きも気になりません。
ボリュームを上げたくなる音で、パワーをかけても大丈夫、かなりの大音量が出せます。問題は微かに、中音域に共鳴音がある様で、バッフル後方からのユニットの取り付けの為かもしれません。

最後は、期待のバスレフです。
一段と雄大な低音が感じられ、黙って聴くと8cm一発とは思えないスケールです。 一方、中音の濁りが、多少感じられます。
これまでの視聴で、思い当たる点があったので、箱の内部に吸音材を入れることにしました。
左右の側板一面にグラスウールを入れることで、バスレフの効きも弱くなると思われますが、多分良くなると予想しました。
その後の視聴では、低音の量感はバスレフ並、濁りや共鳴音も減少し、バランス的にはベターでしょう。

さて、コレまでの視聴では触れなかった、大問題に関してです。
それは、箱に入れ中低音が出るようになったことで、高音不足が深刻化している事です。
8cmユニットなので、大丈夫かと思っていましたが、箱に入れると、軸上(ユニットの真正面)で聴くようにセッティングしても、高音不足は確実です。

色々なツィーターを試して見ましたが、フォステクスのFT11RPと言うツィーターを1.0uFで繋いだ状態で満足の行くバランスを得ることが出来ました。(後の測定結果で、ちょっとビックリするバランスだったけど)

バスレフ型、プラスツィーターの状態でなら、遠距離での視聴にも充分応え、結構大きな音も出せます。
刺激的な音がしないのに、情報量不足を感じる事も無く、ボリュームをもっともっと上げたくなる感じの音質で、なかなかのモンです。(ただし、アンプは選ぶ)

測定結果と自己採点

20cmの台に載せた状態、ユニットの軸上50cmで、裸の状態。
中低音は出ていないが、視聴上は、結構感じることが出来る。


20cmの台に載せた状態、ユニットの軸上50cmで、後方開放型。
200Hzに激しいピーク、共鳴音以外に、こんな周波数でも響いていたのか。


20cmの台に載せた状態、ユニットの軸上50cmで、密閉型。
中低音はしっかりしてきたが、2KHz以上の2つの山谷は何だ?
後方開放型の為かと思ったが、そうでも無い様だ。


20cmの台に載せた状態、ユニットの軸上50cmで、バスレフ型。
さらに低音が出ているが、相変わらず謎の山谷が
ユニットの中付けが効いているのか、それ以外の原因か?


20cmの台に載せた状態、ユニットの軸上50cmで、グラスウール入りバスレフ型。
低音の形は、更に良くなり、中高音のピークディップも多少緩和された?


上記の状態で、フォステクスのツィーターを1.0uFでプラス。
視聴上では、バランス的に良かったのに、特性的には全然高音不足でビックリ。
測定位置を変えた(使用する場所へ移動)ので、低音特性が変わっている。

中高音のピークとディップの謎は有るが、いずれにしても2KHz以下は急降下の特性を持っている事で、箱に入れるとツィーターが必要と思われます。
ただ、視聴上は結構高音が感じられていたので、ここまで低下しているとは思わなかった。(2つの山が効いていたのだろう。)
中低音は魅力的なので、1KHz以下で切って3ウェイがベストの使用方法でしょう。
ただし、3ウェイにするなら、もう少し大きなユニットをウーファーとして使いたいなぁ。
トーンコントロールで、高音をちょっぴりアップさせて使うのが無難で、フルレンジとして使うには難しいユニットかもしれない。
箱に入れた状態ではツィーターが必要なので、結局は裸の状態で使用しています。
なら、箱は作らなくても良かったんでは無いかと言うことで満足度は70%ってところ。



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