くりぷぴょん


経緯
ビクターにはSX-3と言うベストセラー機が有りました。
大人し目の音色で、当時の私の好みでは有りませんでしたが、クラッシック向きとしては良かった記憶が有ります。
その系譜は今にまで続いていて、SX-500DEとしてラインナップに残っています。
ただ、途中で密閉型からバスレフ型に変更されて、かなり印象が変わっています。
一方、当時の技術者が設計したクリプトンのKX-3と言うスピーカーが有ります。
これは密閉型で、イメージ的には、此方がSX-3(型番も意識してる?)の後継機と言う感じです。

最近のスピーカーの多くがバスレフ型で、コンパクトな割に低音の量感の有ります。
一方、締りが無く「ボンボン」言っている感じのスピーカーも少なくは有りません。
密閉とバスレフは一長一短で、どっちが良いとは言えませんが、密閉には密閉の良さが有ります。
設計は簡単だし、自作の場合も失敗が少ない筈ですが、問題はユニットです。
最近のウーファーはバスレフ向きの設計が目立ち、密閉で使うと低音が不足しがちです。
「密閉向きのユニットが無いかな?」と思っていて、ふと気が付いたのが、メーカー製の密閉型スピーカーを流用する手です。

ビクターのSX-F1と言うスピーカーを持っています。
有名なスピーカーでも無く、ネットで調べても詳しいスペックは判りません。
オークションでも不人気で数千円で買った物です。
視聴してみると、予想外に良い音です。
サイズの割に低音は出るし、中高音も悪く有りません。
クリプトンのKX-3のスペックは、17cmと2.5cmの2ウェイ、サイズは219x359x290mm、重さが9.6kg。
ビクターのSX-F1は16cmと2.5cmの2ウェイ、サイズは210x360x260mm、重さが7.4Kg。
結構近い構成と大きさです。
一方値段は段違いで、前者は252,000円(ペア)もします。
これはSX-F1を改造して、KX-3に迫る(もしくは超える)ってのは面白いかも知れません。

改造のポイントは、、、。
1:箱の容量は変更せず強度をアップ
2:ネットワークのパーツを変更
3:バイワイアリング端子にして、パナソニックのSA-XR55のバイアンプ機能を使えるように
ネットワークの定数は基本的に変更せずにグレードを上げる方針ですが、視聴によっては変更の可能性も有り。

SX-F1の調査
遠くから見ると高級機見たいですが、近づくと安っぽさが現れる感じの仕上げ。
バッフルは19mm、側板は18mm、裏板は16mmのMDF製です。
ウーファーのザグリが7mm有りますが、幅一杯の取り付けなので強度不足は無いでしょう。
容量は約12リットル、内部はエステルウールを一杯に詰め込んでいて、驚きました。
昔ならともかく、この時期の密閉型で、これだけ詰め込んでいるのは珍しいと思いました。
ウーファーは鉄プレスフレームで重さ約1170グラム。
このサイズでは珍しく6箇所のネジ穴が有ります。
マグネットサイズは判りませんが、カバーのサイズが直径88mm、厚み38mmです。
ユニットの中央、キャップの奥に奥に見えるのは樹脂製のフェイズプラグ(?)です。
センターキャップは単なる網で透過性が高いものです。
ツィーターは3mmのアルミダイキャストフレーム、一部をカットしてウーファーに近接して取り付けられる様になってます。
マグネットサイズは直径62mm厚み12mmと直径55mm厚み7mmのダブルで防磁型、重さは約580グラム。
ネットワークは12mmのMDFに取り付けられ、フェルトを挟んで裏板にネジで留められています。
ウーファー側、鉄芯入りの1.5mHとBPコンデンサーの8.2uF。
ツィーター側は、3.3オームの抵抗を入れて、その後BPコンデンサーの4.7uFとU-CONの0.47uFのパラと0.22mHの空芯コイルの組み合わせ。
ユニットのインピーダンスは、それぞれ6オームなので、そこから考えると、ちょっと計算式とは合わない定数のネットワークです。
クロスオーバー周波数は約1200Hz程度でしょうが、正確な-12dB/octでは無く、最初は緩やかに、途中から更に落ちていくタイプだと思われます。

キャビネットの強度は十分、ネットワークもしっかりしています。
ルックスも、マァマァだし、音も良いし、、、。
もしかして評価された(売れた)製品なんだろうか?
このままで良いかとも思うし、改造して大幅なグレードアップが望めるかどうかも自信なくなってきました。

設計
密閉型の低音特性は容量で決まってしまうので下手に変更しない方が良いと思ってましたが、ばらして見て考えを変更しました。
これだけ吸音材を使っているのは、それでQ0を下げている筈です。
もう少し大きな箱で鳴らすべき所を、使い勝手(売りやすさ)を考えて、このサイズに押し込めたとも考えられます。
そこで容量は少しアップする事にし、視聴してみて容量の調整が可能な構造にもしておきました。

形状は単なる直方体で、ワンサイズアップするだけなのは面白くないので、跳箱と同様の台形で行きます。
ユニットを取り付ける事が出きるギリギリのサイズの台形で約11リットル、足りない分は台に見立てた下部のボックスで補います。(約7リットル)
本体と台は分割できる構造にしておいて、台に鉛砂等を入れ容量調整と、全体の安定度を上げる様にします。
板取やユニットのレイアウト、ネットワークの取り付け位置等の考慮を多方面から検討し、纏め上げた設計となっています。

板取を見る
図面を見る

組み立て
仮組みをしてみると、部品数は多くないものの、やはり斜めになる側板が厄介そうな感じです。
台の様に見える下部と上部とは、ボルトナットで結合、外せる構造の為、ボルトとT字ナットを使用します。
6箇所で止めれば、まぁ機密は保たれると思います。

台の部分の組立ては簡単です。
上部の組立ても釘を使わず、ハタガネを多用して行いました。
天板と底板を接着してしまい、その後に側板をはめ込む様に組立てます。
側板は、斜めにカットしないとはまらないので、上下とも3mm分斜めに削りました。
隙間が出来るに決まっているので、カンナでざくざく削り、後でボンドで埋めることにします。
広い隙間が出来ては拙いので、この部分の接着は乾いても目減りの少ないコンクリメントを使用しました。
接着後にバッフルとの段差が多少出来てしまったので、モデリングペーストで埋めて平らにしました。

ユニットの取り付けは、元々SX-F1で使用されていた木ネジを使います。
ボルトとT字ナットの方が良いとは思いますが、ウーファーのゴムカバーの関係で無理でした。
まぁ6箇所だし、取り外しを何度も行う事は無いので問題ないでしょう。

台の塗装は何時もの様に、ペーパーを軽くかけた後、水性の塗料を塗りました。
上の本体部分は、木目のシートを貼り込む事にしました。
側板と天板方向、バッフルと底板と背板方向の2方向に分けて貼りました。

ネットワークは左右の側板に接着する事になりますので、コイルの隙間にエポキシ系の水中ボンドを埋めて平らにしておきます。
ツイーターのネットワークは上部へ、ウーファーのネットワークは下部へエポキシ接着剤で接着します。
ウーファーの端子直前に0.1uFのコンデンサーをパラっておきます。
ネットワークの定数に影響を与えない様な小容量、かつ高級なコンデンサーを使うのは、効果が有ると言う経験が有ります。

視聴
完成時の重さは10.5Kgと、それほど重く有りません。
強度は十分、しっかりしたキャビネットと言えます。
SX-F1でツィーターのレベル調整に使っていた抵抗が無い分、高音のレベルが高いのは当然です。
もしかしたら無くても大丈夫かと期待していましたが、やはりレベルを落とさないと駄目でした。
アンプのバイアンプ機能を使用して、ツィーター側のレベルを少し下げて、正式な視聴に入りました。

先ず驚いたのが低音のスケール感です。
キャビネットの容量アップにより、量感は減る筈ですが、圧倒的に低音が出ています。
量感が有るのにボンつく事もなく、とても16cmウーファーとは思えない余裕を感じます。
中高音へのつながりも良く、情報量、キレにも不満がありません。
SX-F1オリジナルと比べると、明らかにレベルアップしていて安心しました。
ジャズは元々得意でしたが、クラッシックにも良く、オールマイティーのスピーカーになりました。
ルックスも(遠目で見ると)悪くないので、満足度は高く、90点を上げても良いと思います。

目標のクリプトンのKX-3との比較を直接は行えませんが、此方は此方で良い感じです。
中高音に本当の高級品との差が出ているようで、「憂い」や「湿り気」と言った微妙な部分の再現に不満が有ります。
その辺を必要とするソースを再生しなければ、良い勝負が出来るんでは無いかと思います。
もちろん、その不足分に対して、「幾ら払えるか?」ってのが、個人の価値観になります。
これだけの費用でこれだけの音が出れば、満足するのが私の価値観です。

測定
床の上に直接置いて、ツィーターの軸上50cmでの測定を行いました。
1ドット0.5dBです。
アンプのAにウーファーを、Bにツィーターを接続して、同時に鳴らした状態です。


同じくバイアンプ機能を使用し、ツィーターのレベルを調整(絞る)した状態で、視聴上バランスが取れている状態です。


比較用のSX-F1の測定です。
50cmの台に乗せ、ツィーターとウーファーの中間点の軸上50cmです。


全体の形は、殆ど変わりません。
低音は、視聴上とは逆にレベルダウンしています。
容量アップによる妥当な測定結果です。


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