センター176ES


設計
友人のリクエストにより、「センター174」と言うスピーカーを作成しました。
これは防磁型のフォステクスの8cmフルレンジFE87を2発使用したバスレフ型で、普通のスピーカーのセンタースピーカーとしては、何も問題が無い出来栄えです。
その友人が、以前私が使用していたスピーカーを入手したのが事の始まりです。
フォステクスの6N-FE88ESを使用したバックロードホーンで、小音量で聴く限り相当に高いレベルのスピーカーでした。
彼のAV用スピーカーと交換して鳴らしてみると、あまりの差にビックリした様です。(当然だ、私の少し前のメインスピーカーなんだから。)
すっかり気に入った彼が、ピュアオーディオもAVも、これで鳴らす事に決定。
問題はAV用として使用した場合、センタースピーカーやリアスピーカーとの音色の差です。
それまでのセンタースピーカーは前述の「センター174」、リアスピーカーは長岡氏設計のクレーン(使用ユニットフォステクスFE106シグマ)です。
これらのスピーカーを全て6N-FE88ESで統一したいと言うリクエストに答えて設計してみました。(なお、リアスピーカーは、クレーンのヘッドを改造して取り付けることにしました。)

6N-FE88ESと言うユニットは防磁型では無いので、設計には工夫が必要です。
それは、ユニットを背中合わせで、外に漏れる磁力を打ち消せないかと言うアイディアでした。
それで不十分なら、キャンセリングマグネットを付けたり、ステンレス板をテレビの間に挟めば、何とかなるかなと思います。(最悪は距離を開ける。)

センタースピーカーはテレビの上に設置する関係で、なるべく小さく&薄くが好ましいです。
低音もそれ程求められなので(5.1chのサブウーファーが負担)、密閉型にします。
外形サイズは幅45cm、高さ15cm、奥行き30cmとコンパクトで、容量は7.5リットル。
このユニットを密閉型で使用する場合、容量が大き過ぎると低音の量感が減るので妥当な線です。
ユニットは前後に取り付けられ、後ろはフロントホーンもどきとなっています。
これは、ユニットを背中合わせに取り付け、かつ距離を縮める目的の物で、ホーンとしての動作は期待していません。
しかし、鳴らしてみた感じやルックスの関係で、前後逆にセッティングする事も出来るように、ターミナルは底板に取り付け、ケーブルを通すスペースを設ける為の台も切り出しています。
その台も含めて15mmサブロク合板、0.5枚で済みます。

図面を見る
板取を見る

組み立て
最初に、仮組みをして、組み立てる順番を再確認します。
設計時に、頭の中で考えた順番は、実物を前にすると異なる場合が、有るのでその場、その場でやりやすいように組み立てます。

このスピーカーは、2つのユニットが反発しあう事になりますし、ユニットの取り外し機会がある(キャンセリングマグネットの追加等)ので、T字ナットを使用します。
ユニットの取り付け穴を予め開けておいて、板の裏側からT字ナットを金槌で打ち込みます。
ユニットの取り付けは、当然、付属のモクネジは使わず、T字ナットのサイズに応じた六角ネジを用意しました。(太さ4mmのネジ)
何時もの様に、少し大きい目(5mm)の穴を開けて、裏からT字ナットを打ち込むと、まずい状況が発生しました。
フォステクスの6N-FE88ESの取り付け穴は直径82mmで、マグネットのサイズが80mmで、ぎりぎりの隙間しかありません。
しかし、T字ナットを打ち込むと、ナット自身の一部が取り付け穴をふさぐ形になってしまいます。
これでは、ユニットが入らないので、T字ナットの一部を金属ハサミで切り落としました。

箱の組み立ては、ホーンの開口部が面倒かもしれません。
図面では短い板(125mm)をはめ込み、隙間を水中ボンドで埋めて直線のホーンになる設計でしたが、板取りの方では長い板(165mm)になっています。
このスピーカーを使う事になる友人を喜ばすネタとして、ホーン部分をアールを付けた板で構成してやろうと考えたからです。
写真の様に、木口に予めフリーハンドでそれらしい曲線を書いておき、それを目標にカンナで削りました。
大まかなサイズまで削ったら、電動サンダーで磨いてホーン部分が完成です。
なお、この工程は電動カンナで行わない方が良いと思います。間違いなく削り過ぎる事となるでしょう。(手動カンナで行っても、大した手間では有りません。)

箱本体の組み立ては、釘を使って楽勝。
高さが10cmそこそこなので、釘を打つのは中心の一箇所でOKです。
一箇所の場合、板が回転してしまいますが、一気に組み立ててしまうので、最終的には天地の板で押さえ込まれてしまう事になります。
天板で蓋を閉める前に、グラスウールを入れますけど、設計時とは異なりLの部分にふわりと1枚(合計2枚)入れる形にしました。
これは、実物を見てみると、L字部分が狭いので、わざわざ2つに分けなくても構わないだろうと言う判断です。
スピーカーの工作の場合、作っている最中に「適当に」予定が変わる事は良く有ります。
最後に、ホーン開口部をはめ込むのですが、この時のグラスウールも板を押し返さない程度に詰めておきます。
はめ込みは天地板と、リアバッフル板等の接触する予定の部分にボンドをタップリ塗ってから、強引に押し込みます。
当然、殆どのボンドははみ出てしまうので、乾く前にぬれ雑巾でふき取っておきます。 後は一週間ほど乾かしてから、塗装作業に入ります。
一週間以上の間を開けるのは、木工用ボンドが乾ききる事と、無理やり釘やボンドで変形させられた板材が、その形に馴染む為の時間です。
あまり直ぐに塗装に入ると、後でじわじわ影響が出てきそうな気がします。

塗装
使用者のメインスピーカーが黒なので、同じように塗るだけです。
何時もの様に、釘穴とデコボコをウッドエポキシで埋め、全体を120番のペーパーをあてた後、塗装に入ります。
メインスピーカーの仕上げ自体が、適当なので、此方も適当で良いでしょう。
と、言うことでハケによる黒ラッカーの3度塗りです。
私の場合、一度に厚く塗ってしまいますので、一回塗る事に数日間の乾燥時間が必要です。
乾いたら塗り、乾いたら塗りを繰り返し、ある程度の厚みが出来た段階でサンダーをあて、表面を平らにします。(400番)
その後、最終仕上げとしてラッカースプレーを数回吹き付けて完成です。

視聴
キャンセリングマグネットをつけないと防磁タイプには程遠いので、エポキシで接着した状態で使用します。
センタースピーカーですので、モノラルでの視聴となります。
一聴して分かるのが、音の立ち上がりと立ち下がりの鋭さです。
パルシブなソースを聴くと、前作(センター174)に圧倒的な差をつけます。
音調も元気良く、明るく、派手に鳴ります。
しかし派手と言っても、安価なユニットに有りがちな下品さが有りません。
ESシリーズに共通するクールな音調で、もう少し暖かい音がしても良さそうですが、これはエージングが、ある程度、解決してくれるでしょう。
低音は明らかに不足で、これ一発でのオーディオ使用は厳しいと思いますが、センタースピーカーとして必要な部分は出ています。
値段は高価ですが、友人のメインスピーカー(同ユニットを使用したバックロードホーン)には、ピッタリのセンタースピーカーが出来ました。
なお、ホーン側を前にしても視聴しましたが、多少の効果は感じるものの、ホーンの付帯音が気になり、ホーン側を後ろにする方が無難です。

測定結果と自己採点
特性は200Hzあたりまでは、実用レベルで出ています。(一枚目が通常、二枚目がホーン側を前面にして測定)
ただ、かなり波打った特性で、特性だけ見るとセンター174の方が良いと思います。
しかし、出てくる音は価格差だけのことは有り、もう元には戻れないでしょう。
さて、防磁効果のほうですが、キャンセリングマグネット無しでは、話になりません。
背中合わせでのキャンセリングを狙うなら、数センチの隙間ではなく、もっと密着させないと駄目なんでしょう、多分。
つけた状態では、「一応」AVスピーカーとして使えるレベルに収まっており、テレビの上に置いた状態で影響は出ません。
台との間にステンレス板でも挟めば万全だと思います。
ルックスや音は良いのですが、キャンセリングマグネット無しでは防磁にならなかった事や、値段を考えると、満足度は75%です。

2001年08月17日 更新
このスピーカーを使用した5.1chシステムを視聴する事が出来ました。
全てのスピーカーを6N-FE88ESにした効果は非常に大きく、音色が統一されたことにより、自然で美しい音場が形成されている様に感じました。
情報量も多く、ダイナミックレンジも広く、和室6畳では最高級のシステムになったように思います。
もっとも、ユニットがこれで、アンプとDVDが最高級品クラス、トータルのコストは自宅のオーディオとは、一桁違うんだから当然といえば当然だけどね。



戻る