青天井166E


設計
昨日発売されたフォステクスのFE166Eは前モデルのFE164Eと良く似たデザインですけど、内容は全然違っています。
視聴して見ると、全域に渡る分解能の向上が見られ、トーンもソフトから、むしろシャープに変わっています。
高音の伸びと言う点でも大きく向上、フォステクス歴代の16cmユニットの最高傑作FP163N並みの高音を持ってます。
これだけ出れば、ツィーター不要、一発で使えると感じました。

さて、「ダイナミックテスト(仮)」で紹介したケンウッドのスピーカーも、そうですけどメーカー製のスピーカーは極めて優秀です。
コストパフォーマンスで対抗するには難しいご時世ですので、違うアプローチを心がけて見ます。

テスト用のバスレフ箱(メーカー準推薦箱に近似)で視聴すると、使えるレベルの音には成っていますが、もう一頑張りしたい感じです。
メーカー推薦のバックロードホーンで使うのが無難だと思いますが、気に入らない点が有ります。
一つは、スーパーツィーターを追加するのを前提としたと思われる、巨大な箱に成っている事。
もう一つは、その箱を切り出すのにサブロクを3枚も使用している事です。
私が設計したフランケン(20cmバックロードホーン)でさえ、2.5枚で2本作れるのに、16cmで3枚は贅沢過ぎるでしょう。(笑)
そこで、15mmサブロク1枚で1本取れるように設計しました。
ポイントは、ホーンによる低音の強化はメーカー推薦箱ほど行なわず、程ほどにして、ツィーター無しでの使用を標準とする事です。

今回のバックロードホーンには、以前より行ないたかった構造を採用しました。
メーカー推薦箱等の場合、音道の取り回しを行なうのに、180度の折り返しが複数現れてしまう事や、ホーンが直管の連続になってしまう(平行面多い)等の問題が有ります。
その問題が、どの程度音に現れるか分かりませんが、気分的に良くありません。
今回は、折り返しは90度のみ、音道も直管無しで、かなりホーンらしくしました。
板の斜めの接着が有るので強度は落ちますが、此方の問題を軽く見る事にしました。

スロートは108平方cm、ホーン長は1.7m、カットオフ周波数は28Hz、ホーン開口面積630平方cmと、やや控えめ。
ホーン長の関係で、50Hz以下は再生は無理、80Hz程度までキッチリ再生できれば良しとします。
40Hzが出ているかどうかは、スケール感等に大きく影響しますが、それはスーパーウーファーに持たせるべき領域で、バックロードで再現しようとすると、巨大なホーンが必要となります。
また、大抵のソフトは80Hzまで出ていれば問題なく再生できます。
空気室の容量は4.2リットルと非常に小さくなってますけど、よく見ると7.5リットルのデットスペースと繋がっています。
これが全部空気室として動作するとは思えませんけど、まぁ適当な容量までデッドスペースに小石等を放り込んで調整しようと言う考えです。
この小石はキャビネット全体の重量アップやダンプに効果を発揮します。
勿論、小石だけでなく、吸音材等、色々な物を入れれば、音の変化も楽しめる事と思います。

さて、気に成るのはキャビネットの強度です。
バッフルは2枚重ねと、補強板によって強度は保たれていますけど、ホーン開口部は、かなり弱い感じがします。
階段を構成している板を、この部分の補強に回す事も考えましたが、補強は鳴らしてみてから後日追加すれば良いと言うことで、「後で追加できる部分」は、ほっておく事にしました。(ホーン開口からつっかえ棒を差し込んだり、側板を2枚重ねにする等)

いずれにしても「組み上がってからの調整のし甲斐が有る」というアプローチです。

ホーン開口とユニットとの距離が小さい事は、音源の位置が近づくと言うメリットが有ります。
一方、中高音のモレが悪影響を与える可能性が有ると言うデメリットも有ります。
今回の場合ホーン開口が上を向いているので、むしろ音場創造効果が期待できると見ます。
このスピーカーは、原音再生の能力よりも、楽しく聴けると言う能力を優先しています。
ユニット、ターミナル、ケーブル、板、カット代、そのた諸々を合わせても3万円でお釣が来る筈です。
「安い」「メーカー製に無い構成と音」「製作も簡単」の三拍子、吉野家の牛丼的なスピーカーを目指しての設計になってます。

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組み立て
部品数は30個と多い目です。
ただ、その多くは補強板で、主要なホーンを構成する部品は少ないです。
今回のラワン合板15mmサブロクは、何時もと同じで2,980円/枚です。
今回は、白っぽく硬い感じがするので、アタリかもしれません。
カット代と送料を含めてペアで一万円を切る(9,760円)のは狙い通りです。
パーツが揃っているか?サイズは正しいか?等を確認する意味も含めて、仮組みして見ます。
仮組みをすると、組み立ての順番や、気をつけなければいけない点等が、ぼんやりと浮かんでくるので重要な作業の一つだと思います。
また、この段階で今回のスピーカーの手ごたえと言うのも感じられたりします。
長年の勘では、「今回は成功!」です。(<ホンマか?)

組み立ての最初の手順は、内部で音道を形成する板の位置を側板に書き込むことです。
音道の位置は重要なので、狂いは少ないに越した事は有りません。
今回は、斜めに取り付ける板が有るので、特にこの作業は手を抜けません。
設計図と同じ様に、側板の内側に線を引いていきます。
面倒な作業で、一時間以上かかりますが、急がずのんびり行ないます。

さて、釘穴を開ける作業の前に、乾燥時間が必要な作業を行ないます。
音道をスムーズに形成するための山ブロックの接着とバッフルの2枚重ねです。
それから、仮組みを行なった時に気付いた事ですが、天板に、音道板を固定する板(補強板)が有った方が組み立て易そうです。
これは、余った板(設計図の斜線で捨てる予定だった部分)を接着します。

さて、次は釘穴を開ける作業です。
作業の効率化の為に、側板を二枚重ねて、一気に穴を開けます。
この時、キャビネットの外に来る面同士を合わせるように重ねて行ないます。
ドリルで穴を開けると、刃を入れた逆の方は表面の木が剥がれ汚くなりがちなのです。
そこでキャビネットの外にくる面同士を密着させておくと、それを避ける事が出来ます。
勿論、一枚一枚開けるのが最高ですけど、線引き作業も含めて倍の労力が必要なので、この辺は手抜きします。
今回は32mm長のスクリュー釘を使用しますので、穴は3mmのドリルで開けます。
釘を打ち込んだ後、頭の部分をめり込ませる為に、板の表面を5mmのドリルで軽く削っておきます。
この作業も、のんびりと一時間以上かけて行ないました。
ユニットの取り付けは、4mmのT字ナットを使用するので、穴は5mmのドリルで開けます。
バッフルの2枚重ねを接着してしまってから、実物を置いて位置を決め、一気に開けました。

今回の工作で一番難しいのは、斜めに接着する板が存在する事です。
そこで、最初に側板に位置決めの板を固定してしまった後に、その位置に合うように音道部を作成して乾燥させてしまう事にしました。
その為に、設計図で予定していた固定板(ユニットのくり抜きを1/4した分)以外に、余った板を小さくカットして、音道固定用のパーツを作成しました。
これを側板に仮止め(釘を軽く打つだけ)して、音道の乾燥後は外してしまいます。

通常の接着作業は木工用ボンドですが、この部分だけは灰色のコンクリボンドを使用します。
これは接着力では劣るものの、乾燥した後でも目減りが少ないと言う特徴が有ります。
今回の様に板を斜めに接着する場合、どうしても隙間が出来るので、木工ボンドでは隙間が出来やすくなります。
コンクリボンドをタップリ塗り、釘を打ち込みます。
そのまま90度に固定されては駄目なので、すぐに型に合わせてはめ込み、乾燥させます。

さて、乾燥の時間を利用して、ちょっとした小細工を行ないます。
今回、バッフルの厚さは30mmになり、多少筒としての癖が出る可能性が有ります。
そこで、後ろの15mm分程度を斜めに削って、その影響を減らす工夫をしました。
これは目分量で、棒ヤスリを使用してガシガシ削る事になります。
もちろん、T字ナットの部分は削れませんので、まぁ適当に滑らかになるようにしました。

音道部の斜めに固定する部分が乾燥してしまえば、後は簡単です。
全てのパーツを下書きの上に並べて、左右の側板ではさみ込んで釘を打ち付けます。
この作業は一人では厳しいので、知人に協力を要請しました。
気をつけないといけないのは、ホーン開口部と天板が接合する部分です。
この部分は隙間が出来やすい形状なので、コンクリボンドをタップリ塗って接着します。

ボンドの乾燥を待つ間に、スピーカーの配線の準備をします。
ターミナルはホーン開口部、上から約20cmの所に穴を開けておきました。
箱の完成後に穴を開けるのも可能ですが、組み立て前に開けておいた方が楽です。
ターミナルは何時ものトリテック、ケーブルは3.5スケアのキャブタイヤケーブルを40cm程使用します。
空気室の調整を何度も行なう可能性が高いので、ユニットとのはんだ付けは行なわず、ファストン端子を使用して結線しました。
塗装は、後回しにして、一応完成した事と成ります。
ユニット、板、カット代金、ターミナルから、ボンドや釘等の雑費も含めて全部あわせても、なんとか3万円を切る筈です。

視聴結果
近距離でユニットが耳の高さより下に成る視聴位置だと、エコー成分(共鳴音では無い)が増強され多少気になります。
音道の折り曲げが90度のみというのは、180度に比べて中高音の漏れが多くなるのは考えられます。
もちろん、開口を上に向けているのは、それを積極的に利用する意図がある訳でです。
ただし、音量を上げて行くと「過ぎる」感があるので、吸音材を入れる等の調整も必要かもしれません。

中高音に、やや分解能が低い部分が有り、中低音に濁りが有ります。
前者は、今後のエージングで解消される可能性が有りますが、後者は箱の問題の様です。
中低音の濁りの原因と思われるのは、開口部(背板と側板)の強度です。
ターミナルを取り付けた板は予想外にしっかりしているのですが、開口部は盛大に振動しています。
これは、補強した方が良さそうです。
もう一つ考えられるのは、空気室の容量です。
視聴は空気室に何も入れない状態(約11.7リットル)で行ったのですが、何かを詰めて、もう少し減らした方が良いと思います。

気になる点は有るものの、全体を見てみると、「青天井」の名に相応しく、開放的で元気なハッピーなサウンドです。
情報量が多く、微小入力に強いのは、強力な磁気回路と軽量(6.9g)でサブコーン付きの振動板と言うのが効いていると思います。
生きが良く、華やかで何を聴いても明るい気分に成ります。
華やかと言っても、上品さが有り、ボリュームをかなり上げない限り、賑やかには成りません。
低音と高音のバランスが良く、スーパーツィータやサブウーファーを特に必要としません。
ただし、ユニットの軸上をかなり外れた設置(正三角形の頂点で視聴、角度60度)の場合は、高音が寂しくなります。
超低音は、設計の段階から諦めていましたが、それでも風圧を感じる低音が出るので、通常のCDでは不満無しです。
音調はややクール、とは言えESシリーズ程ではなく、味気の無さは少ないです。
ユニットとホーン開口の距離が短いので、近くで視聴しても音像が動きません。
通常のバックロードホーン(スワン式でも)の場合、低音が下、高音が上から聞こえる傾向が有ります。(3mも離れれば平気だが)

測定結果と自己採点
測定環境が整っていないので、測定は後回しになります。

反省から行くと先ずは側板の強度です。
15mmのサブロク2枚で2本ではなく、15mmと21mmのサブロクで作っておくべきでした。(側板が21mm)

それから、ターミナルの処理です。
スピーカーだけ見ていると良いのですが、ケーブルを接続するとホーンの開口からケーブルが飛び出し、結構マヌケです。(笑)
音道にそって内部ケーブルを這いまわし、キャビネット下部、背面にターミナルを付けたほうが格好良いと思います。
勿論、その場合、キャビネットを壁にピッタリ押し付けて使えなくなります。(ホーンの延長効果も減る)

反省点は、それぐらいで非常に上手く設計できたと自画自賛の作品です。
これから調整するポイントは沢山有るとは言え、現段階でもメインスピーカーの資格は十分です。
コストパフォーマンス的にも、メーカー製を圧倒出来ました。
現段階で満足度は90%を超え、なかなかの傑作が出来たと喜んでます。

2003年2月9日更新
カスタム化と塗装
塗装を行う前に、気になる開口部の補強を行いました。
最初に行ったのは、つっかえ棒を入れる事です。
つっかえ棒は直径3cmの樫の丸棒を18cmに切った物と、25cm(26cm)の斜めに切った物を入れています。
これは90cm長さから、ちょうどワンセット取れる計算で決定しました。
ラワンならもっと太い棒も有りましたが、あまり太いとホーンの効きにも影響しそうですし、まぁ樫と言う硬い素材を使ってみたかったと言う事です。
つっかえ棒を入れてからだと、ホーン開口部の塗装がやりにくいので、順番で言うと塗装の後、接着しました。
コンクリートボンドを切り口に付け、上から力一杯押し込みます。

その状態でのテストでは、振動が分散し充分な強度と思いました。
ただ、勢いがついてしまって、側板も2枚重ねにする事になってしまいました。
側板はラワンではなくMDFを使用、ラワンとは異なる素材を接着すれば防振効果も多少上がるかと思います。(ただし高いので、最初から側板は21mmにしておくべきだった。)
90x45cmもの板を密着させるのは至難の業です。
外側はハタ金で抑えれば良いのですが、内側が浮いてしまいます。
そこで先ず内側を24(3x8)本のスクリュー釘を使用して打ちつけ、その後でハタ金を使用します。

塗装は軽く120番のペーパーを当てた後に、水性塗料の4度塗りと手抜き。

視聴してみると補強の効果は有り、低音の輪郭が明確になっています。
一方、その為に中高音の癖が強調された感も有ります。
最後に空気室の容量調整に入りました。
そのままでも問題無いのですが、空気室を減らす事によって、よりバックロードホーンらしい緊張感と言うか、スピード感がアップします。
小石を入れるのに、DIYショップで購入した安売りの靴下を利用しました。
靴下に1.5Kg(容量にして500cc程度?)を入れた物を、一つづつ追加していくと、どんどんらしさがアップします。
ただ入れすぎると、中高音のハリが強くなり過ぎるので、この辺は好みの範囲かと思います。
結局、片方に3小づつ入れることで落ち着きました。
完成サイズは幅240、奥行き450、高さ900mm、完成重量は29Kgとなりました。


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