バットボーイ


設計
ファットーボーイは最新のユニットを久々の密閉型で使用した作品です。
板をフィンランドバーチにした事から勢いがついてしまい、気付けば費用は10万円以上と、ちょっと高くつきすぎました。
また、箱を大きくしすぎたので、小石を入れて調整しないと低音が出ないと言う失敗を犯してしまいました。
勿論、それが音にプラスになった部分も有りますけど、最初から小さく作っておいた方が使いやすいのは確実です。
そこで、今回は同じ様なサイズの密閉型で、格段に値段を押さえた作品を作ろうと思いました。
ただ、同様の音質では面白く無いので、上品で大人しいファットボーイに比べると、ヤンチャで元気の良い音質にしようと考えました。
使用ユニットはマーキュリーのHWG130DPで、HWG130Kと同様の強力なユニットです。
コーン紙はケプラー製ではなくカーボン製で黒く精悍、音はHWG130Kに比べて図太い印象が有ります。
高音のピークも小さめで、やや上まで使えるのもツィーターと組み合わせるのが楽です。
ツィーターは同じくコストパフォーマンスが高いマーキュリーのSED35です。
このツィーターは音色が派手でHWG130DPには合わない可能性が有りますので、本当はフォステクスFT28Dを使いたい所です。
ただ、値段は半分、音色差も大きく、設計意図からすると良い選択でしょう。

前回はフィンランドバーチ15mmサブロク1枚を使用する贅沢な物でしたが、今回はラワン21mmを半分で2本取ります。
ウーファーを後ろからも支える構造は採用しますけど、前回と異なり背板に台を作って、それで支える構造にしました。
前回は、ウーファーの息抜き穴の事を失念して、後で支え棒に溝を掘る方法で逃げましたが、今回は予め後ろに穴を空けて外部に逃がす事にしました。
さて、ウーファーの息抜き穴から出る空気も含めてキャビネットで囲ってしまわないと、厳密な意味での密閉型では無くなります。
この台の部分がバスレフのダクトとして動作するか分かりませんが、イザとなればグラスウールを目一杯詰めれば、何とか成ると思います。
箱の容量は約5.2リットルで、まだ少し大きい感じがしますので、前回同様「石袋」での容量調整があるかもしれません。
箱が軽いので、多少ウェイトアップの意味も兼ねて、少し石を入れることを前提にしています。
箱のサイズはファットボーイに比べると縦長で奥行きが有りません。
今回、ツィーターの取り付けを箱の内側から取り付ける事にした関係で、ウーファーの下に余裕がないとバランスが取れないと判断した為です。
また、どうせなら箱のセンターにウーファーを取りつけようとした為、36cmがギリギリのサイズに成ります。
ツィーターを内側から、取り付けるのは単なるルックスの問題です。
SED35の大きさは16cmウーファー以上ならバランスが取れますけど、13cmでは大きすぎます。(個人的な感覚では)
そこで、内側から取り付け、ドームの部分だけが外から見えるようにしました。

ネットワークはコイルとコンデンサー一発の単純な物です。
テスト箱でのテストでは1.5mHと2.2uFで何となく繋がりましたけど、完成した箱に入れての調整と成るでしょう。
箱も安いし、ネットワークも安いので、費用はファットボーイの半分以下で済むと思います。

図面を見る
板取を見る

組み立て
届いた板を仮組みして確認すると、またミスを発見しました。
ウーファーを支える柱は81x81mmなので、45度傾けて取り付けた場合、背板を取り付けるフレームが邪魔で、取り付ける事が出来ません。
今回はフレームを写真の様に削って解消しました。
柱をもう少し細くしておけば良かったかもしれませんけど、板厚の関係から仕方がない辺りかなぁ。

この加工や穴あけの作業中に気付きましたけど、今回のラワン板は「当り」でした。 目が良く詰っていて、叩くと乾いた良い音がします。
このサイズで21mmと言うのは厚い方ですけど、それでも箱成りは盛大に有るので、響きが良いに越した事は有りません。

今回は塗装を頑張る事に決めているので、組み立て精度は非常に重要です。
組み立てで1mm狂ったら、それを埋めるなり削るなりするのは大変な手間です。
その手間を避けて、塗装で誤魔化そうとしても上手く行きません。
塗料を1mm厚重ねようとしたら、何十回塗る事になるでしょう。
そこで、小さいとは言え、キッチリ測定して釘穴を空けました。
この作業も、ちゃんと垂直が出るように工具を利用しました。
ココまでの作業からは、釘を打ち始める訳ですが、その作業は友人に手伝ってもらう予定です。

それまでに進められる作業は進めておく事にします。
ウーファーの取り付けは4mmのT字ナットを利用しますので、その為の穴を空け、ナットを打ち付けておきます。
ところで、ウーファーの重量の割に取り付け穴が小さいので4mmのネジしか使えないのは、このユニットの弱点です。
概してマーキュリーのユニットは、その傾向があるので、今後の改善に期待しています。

ボックスを組み立ててからツィーターを中から取り付けるので、位置を決めるのが成りそうです。
そこで、予め位置を決められるようにネジ穴を軽く開けておく事にします。
また、中付けをする場合、ツィーターのフレームから飛び出たネジが邪魔になるので、それを逃がす小穴も空けておきました。
実際に取り付けてみるとこの様になります。
ネジの回りに有る大きい目のスペーサーはネジを強く締めるとフレームが割れそうなので、必要と判断しました。(表からネジを締める場合は問題無い強度なんだけど)
ウーファーユニットも置いて見ると、完成時の印象が掴めます。
横から見るとウーファーとツィーターが、かなり接近しているのが見て取れます。
ツィーターの穴の周りに書いてある円は、この程度まで削ろうと思って描いた線です。
フリーハンドで引いたので、適当ですけど、まぁ目安と言う事で。
その線を目処に、棒やすりでゴリゴリと削っていきました。
何となくホーンに見えるように、少しずつ削り、120番のペーパーを当てると、それらしくなります。
削りついでに、ウーファーの裏側も、少し削っておきました。
ファットボーイは15mmの板を2枚重ねる構造で、円の大きさを変えましたけど、今回は21mm一枚なので、少し削っておいた方が音の通りは良くなりそうです。

さて、ここでチョットした測定を行ないました。
ツィーターを箱の後ろから取り付けると、板の厚さ(21mm)の奥に振動板がくる事に成ります。
この事によってツィーターの特性が変わる筈なので、どの程度の影響が出るかどうかの測定です。
4.7uFコンデンサー一発で低音をカット、ツィーターの軸上25cmにマイクを置いて測定します。

一枚目は、裸で鳴らす場合で基本と成ります。


二枚目は、板取通りカットしただけのバッフルに取り付けた場合で、振動板の前には直径34mm、長さ21mmの筒が有る事になります。


三枚目は、穴を徐々に広げた形で、開口は約54mmです。

予想以上に影響は大きく、3KHzを中心にピーク、1.8KHzを中心にディップが出来ています。
一応ホーンとして働いている様で、視聴上でも明らかに中音が強く出ていました。
これを利用して1KHzまで使うか、カットして5KHz以上で使うかは、視聴で決定しますが、ネットワークの調整の楽しみが出来ました。

塗装
塗装の良し悪しは下処理で決まると言っても過言では無いので、手を抜かずに行ないます。(下処理過程0
先ずは、釘穴をパテで埋めます。
穴の直径は5mm程度、深さは2mm程度は有りますので、通常のウッドパテでは埋まりませんので、2液性のエポキシ系のパテを使用します。
ついでに、木目の抜け等、大きな穴は埋めておきます。(下処理過程1
一日以上、乾かした後、120番のペーパーを当てると、かなり奇麗になります。
その時、大きな出っ張りはヤスリで予め削っておくと、ペーパーの節約に成ります。(下処理過程2

今回使用するのは何処にでも売っている普通の水性のアクリル塗料です。
分厚く塗り重ねて、表面を削る場合、との粉を使用するなどして、表面をツルツルにし過ぎると、塗料の木材への食い付きが悪くなって、剥がれてきたりします。
そこで、120番で仕上げた状態の上から塗装する事にしました。
木目が見えても構わない塗装の場合、もう少しペーパーの番手を上げた方が良いと思いますが、今回は木目が見えなくなるまで塗り重ねますので、これで十分です。
乾き難い水性塗料を使用する場合、塗装面を水平にして一面ずつ塗るとムラが出来難いと思います。
「一面塗って、乾かして」を繰り返すと6面塗るのに12時間は必要なので、一気に塗ってしまいたい所ですけど、そうすると「必ず」他の面に垂れた塗料がムラが出来ます。
垂れた所は分厚く塗られた状態なので、表面が乾いても内部は生乾きです。
その状態でペーパーを当てると、生乾きの部分がペーパーにこびりつき、汚く成ります。
休日を使って、「塗り>喫茶店でモーニング」「塗り>昼食を取る」「塗り>お昼寝」「塗り>音楽鑑賞」「塗り>夕食」「塗り>就寝」と塗れば、一回目の塗装は完了します。(塗装過程1
これを繰り返し行い、塗装に厚みを持たせていきます。
二回目(塗装過程2
三回目(塗装過程3
四回目(塗装過程4
五回目(塗装過程5
六回目(塗装過程6
かなり分厚くなってきた感じが有り、また塗装の厚みムラを感じてきたので、一度ペーパーを軽く当てて見る事にしました。(240番)
ペーパーあて直後(塗装過程6B
それからまた、塗装を重ねる作業に入りますが、表面が平面化されてきたので、塗料をはじく感じが出てきました。
後少し重ねたら、表面をツルツルになるまで当てる段階に入れそうです。
七回目(塗装過程7
八回目(塗装過程8
九回目(塗装過程9
この辺りまで来ると、完全に木目が見えなくなってきます。

切りの良い十回目(塗装過程10)が完了した段階でペーパー当て作業に移ります。
120番(塗装過程12
240番(塗装過程13
400番(塗装過程14
この後、600番、800番、1000番、2000番と当てれば、表面はツルツルになります。
この番手になると、手で磨いても摩擦熱で塗装が溶ける感じがあるので、水に濡らしながらの作業と成ります。
水を長時間かけると木工用ボンドが溶ける可能性が有るので、一気に手早く行ないました。(で、写真が一気に2000番に飛ぶ訳だ)
2000番(塗装過程15
表面は平らになったものの、顔が映る(所謂、鏡面のテカリ)が無いので、最終作業としてスプレー式の油性ニスを吹き付ける事にします。
一回目(塗装過程15
二回目(塗装過程16
これで、新品のピアノと比べると、差が出ますけど、まぁまぁの鏡面に仕上がりました。
問題は、塗料の乾燥時に付着する埃で、これ以上を求めるならクリーンルームが必要になるんでは無いかなぁ。

視聴(ネットワークの調整等)
ネットワークの基本的な方針は、コンデンサーとコイルを一発使用する簡単なタイプにする事です。
ファットボーイのコストダウンが目的の一つで有るので複雑な物は使いたく有りません。
さて、今回ツィーターと取り付けをキャビネットの内側から行なった関係で、ツィーターの前面に長さ21mm強のホーンの様な物が有る事に成ります。
この影響で普通に使う場合に比べ、2KHzを中心に音圧の上昇が見られます。
これを利用すると、小さい目のコンデンサーでカットしても右上がりの特性では無く、割にフラットなる事が分かりました。
2.2uF〜3.3uFのコンデンサー一発で、1KHzまでフラットな特性が得られるので、これを利用する方針で行きます。
一方ウーファーの方は、難しい特性に成っています。
1KHzからダラ下がりに落ちていきますが、3KHz〜6KHzあたりで、盛り返しています。
コイル一発で使う場合、0.47mH程度を入れて、中高音を気持ちだけカットする場合、つながりは良いものの、やや賑やかな音調に成ります。
1.5mH程度をいれると、穏やかな音調になるものの、中抜けの感じが有り、ツィーターのレベルを下げたくなります。
1.0mHと1.8uFあたりで妥協するのが安上がりですが、折角ツィーターのローカットが上手くいっているので、ウーファー側は12dB/octにしました。
1.5mHと15uFを使用して1KHzで切る事にすると、見事に高音がカットされています。
それにショートホーンによる中高音の盛り上がりを利用して1.5uFでローカットで上手く繋がります。(正相)
ウーファーのコイルはフォステクスの1.5mH、コンデンサーはフォステクスのCM15uF。
ツィーターのコンデンサーはAudynCAPのQS0.82uFとSOUSHIN V2A0.68uFのパラと安価に。
ダクトの前にはスキマテープを張って機密性をアップさせます。
キャビネット内部に10x20cmの吸音材を一枚入れました。
インピーダンスの測定によるとfocは68Hzと計算値より低めの密閉型として機能しています。
ダクト(?)には、ウレタンの切れ端を軽く詰めました。

音質は、良い意味での個性が有ります。
ショートホーンによる個性だと思いますが、SED35とは思えない押しの強さと浸透力があり、そのパワーがチープさを粉砕している印象が有ります。
対する中低音も厚みが見事でパワフル、全体として目標としていた図太い音が実現できました。
高音の伸びはイマイチですが、不足と言う感じも有りません。
視聴していると、どこかで聞いた事の有る音だったので、「何だったかなぁ?」と記憶巣を紐解いて見ると、JBLのJBL4425に雰囲気が似ているのです。
これは大口径ウーファーと大型ホーンツィーターの2ウェイで、独特の音質を持つ好きなスピーカーでした。
スケールは違いますし、ややウェットですけど、音の持つ雰囲気は似ていてジャズに合いそうです。
気になる点と言うと、全域に渡って情報量不足で大味です。
ただ、エージングによる情報量のアップは見込めますので、期待通りに変化していけば、相当に良いスピーカーに成ると思います。

測定結果と自己採点

ウーファーに1.5mHと15uFの-12dB/octのネットワーク(箱は不完全密閉)
この場合、ショートホーンによる盛り上がりが有るので1.5uFで繋がりますが、そうでない場合は2.2〜3.3uFプラス、アッテネーションを行なわないと中抜けになります。


完成(ダクトには何も入れない状態)


完成(ダクトにウレタンスポンジ詰め)
低音はグッと締まり、視聴上は此方が良い。

完成サイズは幅20cm高さ36cm奥行18cmで、重さは8Kg。
費用はファットボーイの半分以下で音質は一長一短です。
緻密さではファットボーイに分があるとは言え、低音の量やパワーは此方が上。
知人による比較でも、此方の方が良いと言う意見が多かったので大成功と言えます。
ファットボーイに比べてコンパクトな印象で仕上げも上手く行った方。
ウーファーとツィーターの見た目のバランスも含めルックスはかなり良く、満足度は90%です。
エージングが好ましく進行すれば、ネットワークパーツのグレードアップと、ツィーターをSED30に変更すると言うのも行なうかもしれません。(そのぐらい気に入っている)

2003年01月26日 更新
低中音の厚みに中高音の厚みを加えて、更にゴツい感じに成れば良いと思いましたので、ネットワークの変更を行いました。
以前の状態だと、ややクロスオーバー周波数あたりが薄い感じがありました。
コンデンサーの容量を増やす事でツィーターに、もう少し下まで出す事にします。
もちろん、その分高音のレベルが上がってしまうのでアッテネーションが必要となります。

色々と試してみましたが、結局は安上がりなやり方で行く事にしました。
ツィーター側の配線に8オームの抵抗を直列で加えるやり方です。(コンデンサーとユニットの間に8オーム)
この場合、ユニットの音圧は半分(-3dB)、カットオフ周波数が半分(13.25KHz -> 6625Hz)になります。
最高域の伸びは、更に感じられなくなってしまいましたが、予定通りのバランスの変化が有りましたので、これで行きます。



戻る